いろはにほへと 各話口上

1話口上 2話口上
高座より御免を被りまして御挨拶申し上げ奉りまする
西の海から東の浜へ 渡るカモメに潮風荒く
匕首忍ばす懐に 愛も朽ちたさ板の上
紅く咲くのは彼岸花 それより赤いさだめの芝居
座長相務めます遊山赫乃丈に御座りまする

さあて続いて控えしは
十六夜照らす名月も 雲に隠れる色男
お嬢吉三か弁天か 宿無し根無しと肩書きも
呼ばれて久しい不知火小僧たぁ あ 俺のこった

次いで連なる面隠し
忍ぶ姿も人の目に 映るは鬼か白波か
夜に笑って陽に泣いて 心は見せぬ
恵比須の頭巾 見参

続いて控えし破れ傘
紛うて見れば怪我のもと 身の生業も慣れぬまま
十歳重ねりゃ誉れ傘 一座まとめの座頭に御座います

さて ほんじりに控えしは
鵺も烏も恐れて止まる 安達ヶ原のつっかいぼう
天を睨んで地を掴む 案山子の恵信



※「お嬢吉三」とは…
歌舞伎「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」に
登場する盗賊の一人。作者は河竹黙阿弥。

※「ほんじり」とは…
鶏のおしりのこと。別名ボンボチ。

(不知火小僧)
冷てえ冷てえ娑婆の風
吹かれ吹かれて 西から東

(座頭)
瞼の上下 合わせりゃ今も浮かんでくるのは
十年前 あの日あの夜あの時だ

(遊山赫乃丈)
お店ぐるみ父母を 殺めて焼いたお前の前で
念願叶って演じるは 遊山赫乃丈 仇討ち舞台

(恵比須の頭巾)
きっちり喋ってもらうぜ
今こそ全てのからくりを



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